Diversity (For Alan and Keith)
Gray-ScottモデルをUV平面にマッピングすると、このモデルで生成しうるすべての形を連続的に表示することができます。この画像は複雑系科学の研究者にとって馴染みであり、科学的な意味での新規性はここにはありません。しかし、自分が利用しうる最も高速なPCを用いて、インタラクティブに表示しうる最大解像度でこのパターンを表示してみると、想像を超える豊かな形が生まれてくることに気が付きます。この先、PCが高速化すればするほど、私たちはより微細な世界を可視化することができるようになり、未知の形と出会うことになるでしょう。
これはチューリングパターンのみならず、多くのことに当てはまるように感じられます。科学と技術の進歩により、この先、私たちはより深く細かく世界を見つめることができるようになるのです。ある対象に対して、2つしかないと思っていた分類が、実は9つあるかもしれないし、もっと科学が進めば数万のパターンの存在が明らかになるかもしれません。
アラン・チューリングが亡くなった1950年代には同性愛は犯罪でした。キース・ヘリングが亡くなった1990年までWHOは同性愛を精神疾患として扱っていました。21世紀になって多様性という言葉が普及し、ようやくLGBTQというグラデーションをもった性のあり方が知られるようになりました。しかし、このような性自認に対して理解のない人はまだまだ多いように感じられます。まるで古臭いPCを頑なに使い続けて、解像度の低い世界にとらわれているように見えます。高速化と高解像度化が進む時代を生きる私たちには、世界を複雑系として見つめる眼差しが必要ではないでしょうか。
クレジット
- コンセプト:脇田玲
- ソフトウェア開発:脇田玲、長島康生、諸藤勇太、宇田川まや
- 設営補佐:宇田川まや、小川楽生、柴原佳範、鈴木一生、諸藤勇太、山本愛
展示
- 「脇田玲 −アランとキースのために」 (Hokuto Art Program ed.1), 中村キース・ヘリング美術館, 山梨, 2021-2022